興行と無償観戦のはざま -どうしてアマチュアスポーツは興行しにくいのか? その1-

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◉入場無料のジレンマ

日本ブラインドサッカー協会では、公式戦だけでも年間約80試合、日数としてのべ約20日の試合を行なっています。

 

そのすべてが、「入場無料」です。

 

 「無料じゃなくて、500円でもとらなきゃ赤字じゃないの?」

 「有料にしても今ぐらいはお客さん来るんじゃないの?」

 

そう有料化のご指摘をいただくことも大変多いです。

 

◉なぜ、私たちは大会の有料化をしないのか、できないのか?

● 日本の利用料金体系にある興行のハードル

最大の理由の1つは、日本の施設の持つ料金制度にあります。

日本の多くの施設の料金制度は、無償であれば利用料が安く、有償であれば利用料が高くなる傾向にあります。この無償と有償の料金格差が非常に大きい。ブラインドサッカーの日本選手権を実施するような優良大型施設であれば1,000円の入場料で500名の観客では大きな赤字になってしまいます。

 

つまり、有料の利用料金に耐えられるほど、現段階、入場者数は多くなく、無償の料金体系に沿ったほうが、結果としてコストを低くし、リスクの低い運営ができるのです。

 

アメリカでは利用料金体系が有料・無料のみに紐付いているわけではなく、ブラインドサッカーの規模に近い子どもや地域のスポーツ大会でも有料化ができているとのこと(くわしくは beyond sports のブログなどもご参照)。ブラインドサッカーも現状の規模でいうと、施設利用料が格段な値上げなく、500円程度の有料化から進められればリスク低く、その道を模索できるかもしれません。しかし、現実はそうではないです。

 

 

●有料化のインパク

また、有料にした場合に発生する新たに発生するコストも有料化できない理由です。

 

無料の際になく、有料にした際に発生する業務としては、入場料金の管理、入場者の管理(もぎり、ゲートコントロール等)があります。ここにかけなくてはならない業務、人員、それらの労力・コストも見逃すことができません。

 

無料であることで、入場者のゲートコントロールや、立ち入り制限などは不要であり、またそれが生み出す ”雰囲気“ は、現状の規模のブラインドサッカーでは「良い」側面もあります。

 「選手との距離が近い」

 「設営や片付けをチームや観戦者、ボランティアに関係なくやれて、あったかい雰囲気だ」

 「手伝うことがあるから、次にまた来たいと思える」

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そんなコメントの裏側には、よい意味での「ハンドルのあそび」がブラインドサッカーの運営面にあるからとも言えます。

 

 

● 有料になると、観戦者のあり方が変わる?

もう一つは、「社会の見る目」です。100円でも500円でも有料で費用を取ると、「プロ」「サービスとして高い基準」を求められると、私は考えています。

 

 「お金を払っているんだから、これくらいあって当たり前」

 「運営もプロでなくては困る」

 

もちろん、運営もよりよいものを提供したい。それは入場料の発生有無に関わらず持っている気持ちです。

 

ただし、運営に有償常勤スタッフが当てられていなく、無償ボランティアスタッフ(それでもエキスパートたちですが!)に頼っているため、「プロフェッショナルサービス」の提供は困難です。そのための準備の労力、時間はとても不十分です。

 

この「有料で試合を見る」ときに皆さんがもつ「有料なんだからこれくらいの運営」という「固定概念」「ハードル」の高さとどう兼ね合うのかも、有料化を尻込みする理由です。

 

 

● 選手の意識とのギャップ

同様に、選手やチームと、有料観戦者のあいだにも意識の違いが生まれるように思います。

 

一口に「選手」といっても、生涯スポーツとして地域に根ざしてプレーしている選手や、まだブラインドサッカーをはじめたばかりの選手、日本代表として見られる意識も高くプレーする選手など多様です。

 

 「有料料金を払って見られる立場じゃない」

 「技術のレベルを批判されても困る」

 

草の根でプレーする選手も私達にとっては大切な存在です。有料化することで、その人たちの居心地が悪くなったり、批判の対象となることは意図することではありません。

 

運営同様、選手を見るまなざしが、有料化によって変わるだろうこと、それにどのように折り合っていくかも、大切な課題です。

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(つづきます)