オリンピックを自国開催するメリットってなに?(その2)

(オリンピックを日本に招致することについて。前回のつづき)

 

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●経済効果

2016年の招致の際には、その経済効果を東京だけで1兆5千億円、日本全国で3兆円弱という見積もりがされています。

 

64年の東京オリンピックの際はオリンピック特需をきっかけに「いざなぎ景気」が始まった(翌年の65年〜70年にかけての景気拡大期間)とされています。高速道路や新幹線などの巨額インフラ投資にくわえ、当時はカラーテレビの普及が一気に高まり、(新)三種の神器が個人消費を押し上げたと言われています。オリンピック見たさに、カラーテレビを購入したんでしょうね。(そういえば、サッカーワールドカップ日本開催の時も、薄型テレビが買い替えキャンペーンやってましたね)

 

このようにオリンピックをきっかけとして経済効果があることが、メリットの2つ目です。

 

●国威発揚

64年の東京オリンピックではその意味合いは低かったと推察できますが、ヒトラー政権下の1936年のベルリンオリンピックや、記憶に新しい2008年の北京オリンピックでは、国威発揚も大きな目的となっていたと言われています。

 

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この場合、自国民に対して、権威を示し、プライドを醸成させると同時に、対外的にも国の威信を示す機会の二面性があるようです。

 

ちなみに、北京大会では、オリンピックでは金銀銅あわせて958個のメダルがあり、そのうちのちょうど100個(そのうち、金メダルが51と最多。次点のアメリカは36、日本は)を中国が獲得しています。同様に、パラリンピックにおいても約1400のメダル総数の211個を中国が得ています(金メダル数は89。次点のイギリスは42,日本は

 

参考までに、北京大会の前の2004年アテネ大会の中国のメダル数を見ると、オリンピックで63(うち、金メダルが32。なお1位はアメリカで総数102,金メダル36)、パラリンピックではアテネから1位で合計141、金メダル63を獲得しています。

 

中国は五輪の強化をきっかけに、少なくともスポーツ界においては世界No.1の座を得ています。

 

●それならやっぱり日本にはいらない?

ここまでだと、「そんなのいまの日本にいらなくない?」という気がしなくもないですね。

 

確かに、立候補する都市でも先進国と新興国では目的が異なる様子がうかがえます。北京や2016年の開催を勝ち取ったリオデジャネイロなどは、経済発展やレガシーを残すといった意味付けは大きいといえるでしょう。

(2016年の東京の招致活動の報告書はこちらからダウンロードできます)

 

では、一度オリンピックを開催し、成熟した都市である東京は何を目的として掲げていたのか?

 立候補ファイルによると;

 ・次世代への夢と希望

 ・環境問題への対応

 ・平和への貢献

 

確かに、いずれも大切なのですが、「それってオリンピックでなきゃいけないの?」という冷ややかな意見が国内で多かったのも確かなんだと思います。

(立候補の申請ファイルはこちらからダウンロードできます) 

 

それに、レガシーや経済効果、国威発揚においても、これらがすなわち「メリット」になることだけでなく、赤字を大きく抱えた大会もあれば、スポーツ施設のレガシーのその後の活用方法が十分に設計されていなく「ムダ」と言われている大会もあります。

 

山を一時的に切り開いて大会を行うなどした長野五輪も、施設の後利用は五輪後に批判されています。ギリシアの経済危機も遡るとアテネ五輪にあるとも言われてます。

 

五輪の経済効果も、過去のものを分析すると大半が差し引きゼロ、という調査もあるようですし、オリンピックを実施するメリットは一体どこにあるのでしょうか?

 

パラリンピックスポーツに関する仕事をしている身としては、「ぜひ東京で開催を!」という思いがある一方、一市民としては、「本当に必要なんだろうか?」と冷静にみる自分もいます。

 

とはいえ、前向きにとらえてもらうためにはどうしたらよいのか、また、オリンピックが開催される意義と、パラリンピックが開催される意義は間違いなく異なります。

 

(つづく)