ロンドンパラリンピック【ブラインドサッカー】競技環境まとめ(その1)
国際大会の主催事業も実施する私達としては大会運営がどのようになされているのかも大事なチェックポイントです。マニアックな情報ですが、気づいた点をまとめます。
● ピッチ環境
・基本はホッケーコート
パラリンピックはオリンピックの後に実施されます。そのため、競技環境はオリンピック種目の二次的利用です。ブラインドサッカーの場合、ホッケー場が活用されます。
今大会は、ホッケー場としてオリンピックに活用されていた場所ではなく、ホッケー場のサブグラウンドがブラインドサッカーに割り当てられています。(ホッケー場として利用されていたのは真隣にあり、CPサッカーの7人制で利用されています)
・サイドフェンス
サイドフェンスはいわゆるトタン素材。角度は未確認ですが、15度の日本のフェンスに比べて急なため、10度程度ではないかと思われます。
サイドラインから「+1」オーバーして設置されることがルールブックでは求められていますが、この競技上はエンドラインと同じラインまでで、オーバーしていません。
・ピッチの大きさ
ピッチの大きさは22m×42mです。原文の最新版に記されている20m×40mとは異なります。
・人工芝
人工芝はホッケーの後であるため、ホッケーで利用されていたものがそのまま活用されています。
今回の人工芝の特徴は、まず、青色であること。
次に、人工芝のあし(長さ)は極めて短いこと。
3つ目に、密度が高いこと。
4つ目に、保水性が高いこと。
人工芝については、運営側でもさまざま配慮があったと見られます。たとえば、初日は水を撒かずに実施していましたが、競技2日目以降は、2試合に一度程度水をまいています。
*写真:ホースでの水撒き。濃い色が水がすでに撒かれたところ。かなり強い日差しでも3〜4時間は乾いた色にはならない。
*写真:一部、どうしてもすぐに乾いてしまう場所があり、そこはバケツの水で散水。
そもそもホッケーは水を撒くことが前提であり、パックが水で滑りやすいように配慮されています。逆にいうと、水を撒かないと、滑りにくく、ブラインドサッカーにおいても、「引っかかる」(ドリブルをしていてボールが足元でピタっと止まってしまう、ゴムとゴムがすれるようなかたちでひっかかるような、そんな状態)ことが初日は多く見られました。
大会の運営責任者もしょっちゅうピッチに出て、足でザッザッと人工芝をすりながら、滑りを確認していました。
競技2日目以降は水をまいて滑りをよくしていましたが、かえってそれがボールの音をけしているようにも思えます。そのためか、審判の情報によれば、初日は空気圧が0.8だったのに対し、競技2日目以降0.6まで減らしたとのことです(単位がなにかまで確認していません)。
また、水をまくと、ボールがバウンドする際や、キックで芝をこする場合など、水しぶきが上がるほどです。まいて1試合程度は、ボールが転がるだけでも水があがる程度に保水が高くなっています。PKにおいては選手がじっくりとボールの水をユニフォームで拭き取るシーンもみられました。
客席のスタンドも人工芝の上に立てられているため、実際に競技と同じフィールドの上に立てるのですが、感触としてはゴムに近く、「キュッキュッ」という感触です。日本がなれているロングパイルとも、砂入りショートパイルとも違う感触です。
・1/3ライン上に破線
ブラインドサッカーはコーラー、監督、ゴールキーパーが健常者(晴眼者)がにない、声を出せる範囲が1/3ずつに限定されています。
そのラインはこれまではサイドフェンス上にマークがつかれていただけですが(世界選手権はどうなっていたんでしょう?)今大会は、フィールド上にも破線がひかれています。
レフリーはこの破線を利用して、ガイドゾーンの注意をしています。
● スタンド関係
観客席は、メインのサイドスタンドと片側にバックスタンドがあります。
アクレディテーションの発行されている関係者向けに、本部裏にメインのサイドスタンドの1/3程度のスタンドもあります。
*写真:本部裏のサイドスタンド
バックスタンドの片側はスタンドはなく、全部で3つのスタンドに囲われていることになります。
*写真:ゴール裏のバックスタンド
・3面囲いで「サッカー専用」感
本部裏のサイドスタンドは、北京の時にはなかったものです。どのスタンドもホッケー場の人工芝の上に立てられており、人工芝に傷をつけることなどは配慮として優先順位が落とされている状況が伺えます(後々、そのまま有効活用しようとすると客席をフィールド外にする傾向があるようです)。
そのため、ピッチを「囲っている感覚」はとても強いものになっています。さしずめ北京のときの競技上が「陸上トラックのある競技場」で、今回のものは「サッカー専用競技場」です。
・客席総数は北京の3倍ほど?
メインスタンドの客席も北京にくらべてだいぶ高くなっており、客席の収容数も随分高まっているように思えます。
*写真:メインのサイドスタンド。お客さんが少ないのはあまりに朝早いから。
(つづく)