フランスのブラインドサッカーフェンス

◎フランスのサイドフェンス

 早いもので、ブラインドサッカー日本代表の欧州遠征からもう1ヶ月以上。
遠征については「ブラインドサッカー日本代表ブログ」に詳しく書かれているので、ぜひ参考にしてください。
 
マニアックなテーマですが、ブラインドサッカー関係者にとって、海外事情で気になるテーマの一つは「サイドフェンスの仕様」。というわけで、久しぶりのブログ更新は、欧州遠征でみた、フランスのサイドフェンスについて。
 
 

◎対フランス第2戦でのフェンス

 フランスとの強化試合では2種類のフェンスを体験しています。ここでは第2戦で戦った際に利用したプラスチック製のものを紹介します。第1戦のサイドフェンスはフランスにとってもイレギュラーだったものなので参考にするまでもないでしょう。
 
▼フランスのフェンス全体

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色は緑、プラスチックに鉄製の骨組みです。大きさはほぼ日本と同じで幅は2メーターちょうどとのこと。2mのフェンスをつなぎ合わせていくのは日本と同じです。
重さは正確には把握できませんでしたが、骨組みが鉄製でもあり日本より明らかに重かったです。フランスでは持ち運んでの利用は想定していないそうで、軽量化されているわけでもありません。(かといって常設でフェンスありのコートがあるわけでもありません)

新年度にあたって(その1)

日本ブラインドサッカー協会は、7月末決算のため、8月1日より新年度を迎えました。

新年度と同時に、これまでよりだいぶ広い事務所に引っ越すことも出来ました。

本当に大勢の皆さんに、日頃から応援してもらい、支えてもらっているおかげです。心からお礼をお伝えします。ありがとうございます。
 

● あらためて、僕らの目指すビジョンと果たすべきミッション

新年度だから何か特別な方針が出てくるわけではありません。僕らが心機一転できるこのタイミングで改めて考えるべきは、僕らの目指すビジョンがどのようなものであり、果たすべきミッションはなんなのか?という問題です。
 

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ブラインドサッカーというスポーツがもつ可能性は本当に豊かだと感じています。競技上、国際大会で優勝を目指すだけでなく、そこにいたるプロセスで生まれる価値、その価値が視覚障害者に伝わる事業、視覚に障害がない人たちに伝わる事業、そのラインナップのなかで私たちはこのビジョンを目指していることを忘れてはいけないと思います。
 
しばしば「『混ざりあう社会』ってどういうことかよくわからないね」という指摘もあります。でも、そういう人は一度立ち止まって考えてほしいと思います。混ざり合うってどういうことなんだろうか、って。
 
想像して欲しいと思います。理想的な障害の有無がボーダレスになる社会ってどんな社会なのかって。皆さんの空想でいいんです「こうなってたいな」「こうなってたくないな」って。
 
僕は「混ざりあう社会とは****である」という言い方はけっしてしないです。それよりも、一緒に考えてワクワクして、仲間を増やしていきたい、ともに行動していきたいと思ってます。「こうなってたいよね!」「こういうのやだよね!」と対話を重ねることで見えてくる私たちのビジョンに共感がうまれれば、それに向けてラインナップされているJBFAの事業たちも違った見え方ができるんじゃないかなと思います。
 
あなたにとって、「混ざりあっている社会」ってどんな状態? どんな雰囲気ですか?
 
そして、このビジョンのイメージを共有することがJBFAの課題でもあります。ビジョンに強く依存して事業を展開しているつもりですが、そのビジョン自体を考える時間を共有できない。一部で研修も実施していますが、なかなか効果を高められないもどかしさもあります(お知恵募集)
 
 

● ビジョンに向かうためのミッション

そのビジョンに、僕らはブラインドサッカーを中心に向かっていきます。ここも意外と大事なポイントなんですが、ビジョンがあったとき、それに最適な方法はじつはブラインドサッカーじゃないかもしれない。
 
でもね、僕らはブラインドサッカーを愛してやまないわけで、その可能性やその力強さをなによりも信じているわけです。
 
【ビジョン】ー【ブラサカ】=【何も残ってない】
 
それが僕たちだと思ってます。
 

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だから、ブラインドサッカーに携わるみんながハッピーである必要があると思う。そのハッピー感が、実は障害者に対する見方やそれを取り巻く環境を変えていくと信じてます。
 

● 重点項目

とはいえ、何点か重点化している方針があります。そんなことを続けて書いていきたいと思います。
 
(つづく)
 
▼新しい事務所

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これと同じスペースくらいがもう1つ分横になっているL字型です。いままでは、立ち寄ってもらっても物理的に”座る場所もない”という狭い事務所でしたが、もう少し気軽に出入りしてもらえるスペースにしたいと思ってます。
 

アジア選手権 in 北京の運営について(その1)

2013年5月20日〜27日まで、ブラインドサッカーアジア選手権が中国・北京にて開催されました。
 
簡単に運営の設備面をまとめておきます。
 
1)ボールは中国製
 

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中国製といっても、選手たちが言うには、これまでよりも「重い」とのこと。ウェイトは測っていませんが、確かにこれまでとは違う質のボールでした。
 
 
2)サイドフェンス
サイドフェンスはほぼ直角、スチールの骨組みに、ベニヤ板の表面。そのベニヤに、ウレタンのような緩衝材(同じく茶色)が薄く貼り付けられていました。
 
▼日本の入場とサイドフェンス。茶色でベニヤのままに見えますが、緩衝材が貼られています。

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▼上部に貼られている赤いテープは選手の保護用です。緩衝材を巻いている表面(ビニール状)が破れている箇所が多く、全体的に貼られています。1枚1枚は日本のものと同様、別々のためこうしてみると歪んでいます。日本で開催するときほど丁寧には修正していませんでした。

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▼サイドフェンス裏側。フェンス自体もスチール製のため重さがありましたが、砂袋でウェイトを重ねていました。初日までは一つずつでしたが、2日目以降、倍になりました。

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▼フェンスとフェンスはジョイントで締め付けられるようになってます。ただ、締め付けられてはおりませんでした。ためしに締めてみたところ、まっすぐに入りにくく、締まりきらないように思いました。

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サイドフェンス自体はそれほど不備を感じませんでしたが、そのほかの印象としては
 ・老朽化しており、表面が破れていいたり、ジョイントが閉まらなかったりする
 ・直角のため、ボールの返りが日本のものと異なる
 
 
3)アイパッチ・アイマス
 
▼アイパッチはディズニーのパッケージ。大きさは日本で利用しているものとほぼ同じでした。ちなみに、こちらの一つで12枚入り。

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▼アイパッチの上には、ガーゼとサージカルテープを貼ります(ルールに規定されているものです)。サージカルテープは日本で利用するものよりも幅広いものでした。ガーゼはごくごく一般的なもの。

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4)時計
外向け(観客向け)の時計はありませんでした。こちらの時計は審判席に向けられているだけです。ベンチからはこの時計を覗きこんで、残り時間を確認していました。

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5)審判本部
審判本部は地面と同じ高さだと、着座するとピッチが見えません。そのため国際大会だと台を置きます。日本だと1段ですが、こ
ちらは2段にあげていました。

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6)各種バナー
いわゆる大会サインの横断幕に加え、「ゴール」という意味の幕が参加国の言語ごとに掲出されていました。

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こちら、幕の内側に、まんまるに小さな穴が開いているのわかるでしょうか?風をぬくための穴のようです。
 
 
7)スコアー
 
▼こんなものでした。(マニアックですが、この得点の表示方法は、日本でよくある「めくる」方式ではなく、つまみをスライドさせて表示する方法でした)大会会場全体で、これだけの表示です。

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8)コーラーがゴールを叩く棒
 
▼スチール製にゴムグリップ

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9)トロフィー・メダル
 
▼優勝〜3位まで、同じモデルのトロフィーでした。メダルは選手いわく「いつもの大会より重い」とのこと。日本で開催するよりも大きめです。

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10)アクレカード
 
井口審判のオフショット、ではなく、首にかけるアクレカード。ちなみに、アクレカードは個人名も写真もなく、またアクレによるコントロールはまったくなかったため、あまり意味のないものでした。

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 ピッチまわりの設備関係でした。パラリンピックを経た国の競技運営、こんな感じです。感想は次回に回すにしても、残念であることは伝わっているかと思います。
 
運営全体についてもレポートしたいと思います(つづく)

ブラインドサッカーブラジル代表の凄さ

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◎ 3月はブラインドサッカーブラジルフィーバー

サッカー界において、「ブラジル」ブランドはそうそうたるものがあります。ブラジルと言えば、「サッカー大国」「実力もトップ」「サッカーが文化として成立している」そんな言葉がサッカーを知らない人からも出てくる通り、サッカーとブラジルは強い関係をもってます。

 

そんなブラジルのブラインドサッカーの代表チームが3月に来日し、さいたま市ノーマライゼーションカップとフィアットカルチョという2つの大会に参加します。

 

通常のサッカーのブラジルも来日すれば大きな話題となりますが、ブラインドサッカーブラジル代表もそれに負けない魅力を持っています。正直、ブラジルの試合を無料で見れるこんな機会は、向こう10年はないんじゃないかと思います。お得です。友だちには、一生のうち一度見るべきものとして引きずってでも連れて来るべきものです。

 

ブラジルのプレーが見れる動画(1)


IBSA World Blind Football Championship 2010 - The Final

 

ブラジルのプレーが見られる動画(2)


Futebol para cegos final 2010 - Blind Football final

 

ちなみに、すでにチケットやVISAの関係からメンバーリストは出ていますが、ほぼこれまでのレギュラーの面々が来日予定です!

 

◎ ブラジル代表の戦績

どれだけ強いのか? 戦績です。

2004年 アテネパラリンピック 金メダル

2006年 世界選手権(アルゼンチン) 準優勝

2008年 北京パラリンピック 金メダル

2010年 世界選手権(イギリス ) 優勝

2012年 ロンドンパラリンピック 金メダル

 

パラリンピックについては、2004年から正式種目になって以来、3大会連覇。間違いなく、世界ナンバー1の実力です。

 

◎ 国内に世界トップチームを招待する意味

 なぜブラジルが来日するのか? 実はこちら、昨年スペイン代表が来日した時と、同じ枠組みです。ちょうど1年前に詳しくエントリーで紹介していますので参考ください。

 世界からトップチームが来日する意味[その1]

 世界からトップチームが来日する意味[その2]

グラスルーツから強化を推進するためにも、日本代表に国際試合の試合数を担保していくためにも必要な取り組みです。また、運営・経営として見ても、大事な事業になりつつあります。

 

◎ いつ、どこで見られるの?

来日中、2大会、のべ3日間の大会に参加します。

◆ 3月20日(水・祝日)@フットメッセ大宮

来日初戦は、日本代表チームとの試合です。「さいたま市ノーマライゼーションカップ」として、ノーマライゼーションの理念普及の役割を担いつつ、さいたま市北区のイオン大宮屋上、フットメッセ大宮にて戦います。

当日は、ブラインドサッカー観戦の他、子ども向け体験会も実施予定です。詳しくは大会特設ウェブサイトを御覧ください。

◆ 3月23日(土)24日(日)@みなとみらいスポーツパーク

週末の土日には、「フィアット カルチョ 2013」として、全国の日本のクラブチームとブラジル代表を含めた競技会となります。日本のクラブチームは地域リーグの上位チームという参加に縛りもあるなか、より高いレベルの戦いを見せてくれる大会となります。

昨年はチームワークを魅せてスペイン代表をたまハッサーズが1−0で下すという金星も生まれ、代表ではないクラブの強みも見られる大会となるでしょう。

こちらも大会特設ウェブサイトをご覧あれ。

 

  *   *   *

 

しつこいですが、ブラインドサッカーブラジル代表のプレーは、お金を出しても見れるものでもない貴重なものだと、強く観戦を皆さんにプッシュします! それに対する日本代表も、日本のクラブチームたちもきっと素晴らしいプレーで応じてくれるはず!

ブラインドサッカーのコアなファンも! まだ見たことなかったけどどこかで見たかったおいう方も! 今回は必見です。3日間も候補日がありますので、ぜひいずれかでご来場ください!

 

 

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興行と無償観戦のはざま -どうしてアマチュアスポーツは興行しにくいのか? その1-

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◉入場無料のジレンマ

日本ブラインドサッカー協会では、公式戦だけでも年間約80試合、日数としてのべ約20日の試合を行なっています。

 

そのすべてが、「入場無料」です。

 

 「無料じゃなくて、500円でもとらなきゃ赤字じゃないの?」

 「有料にしても今ぐらいはお客さん来るんじゃないの?」

 

そう有料化のご指摘をいただくことも大変多いです。

 

◉なぜ、私たちは大会の有料化をしないのか、できないのか?

● 日本の利用料金体系にある興行のハードル

最大の理由の1つは、日本の施設の持つ料金制度にあります。

日本の多くの施設の料金制度は、無償であれば利用料が安く、有償であれば利用料が高くなる傾向にあります。この無償と有償の料金格差が非常に大きい。ブラインドサッカーの日本選手権を実施するような優良大型施設であれば1,000円の入場料で500名の観客では大きな赤字になってしまいます。

 

つまり、有料の利用料金に耐えられるほど、現段階、入場者数は多くなく、無償の料金体系に沿ったほうが、結果としてコストを低くし、リスクの低い運営ができるのです。

 

アメリカでは利用料金体系が有料・無料のみに紐付いているわけではなく、ブラインドサッカーの規模に近い子どもや地域のスポーツ大会でも有料化ができているとのこと(くわしくは beyond sports のブログなどもご参照)。ブラインドサッカーも現状の規模でいうと、施設利用料が格段な値上げなく、500円程度の有料化から進められればリスク低く、その道を模索できるかもしれません。しかし、現実はそうではないです。

 

 

●有料化のインパク

また、有料にした場合に発生する新たに発生するコストも有料化できない理由です。

 

無料の際になく、有料にした際に発生する業務としては、入場料金の管理、入場者の管理(もぎり、ゲートコントロール等)があります。ここにかけなくてはならない業務、人員、それらの労力・コストも見逃すことができません。

 

無料であることで、入場者のゲートコントロールや、立ち入り制限などは不要であり、またそれが生み出す ”雰囲気“ は、現状の規模のブラインドサッカーでは「良い」側面もあります。

 「選手との距離が近い」

 「設営や片付けをチームや観戦者、ボランティアに関係なくやれて、あったかい雰囲気だ」

 「手伝うことがあるから、次にまた来たいと思える」

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そんなコメントの裏側には、よい意味での「ハンドルのあそび」がブラインドサッカーの運営面にあるからとも言えます。

 

 

● 有料になると、観戦者のあり方が変わる?

もう一つは、「社会の見る目」です。100円でも500円でも有料で費用を取ると、「プロ」「サービスとして高い基準」を求められると、私は考えています。

 

 「お金を払っているんだから、これくらいあって当たり前」

 「運営もプロでなくては困る」

 

もちろん、運営もよりよいものを提供したい。それは入場料の発生有無に関わらず持っている気持ちです。

 

ただし、運営に有償常勤スタッフが当てられていなく、無償ボランティアスタッフ(それでもエキスパートたちですが!)に頼っているため、「プロフェッショナルサービス」の提供は困難です。そのための準備の労力、時間はとても不十分です。

 

この「有料で試合を見る」ときに皆さんがもつ「有料なんだからこれくらいの運営」という「固定概念」「ハードル」の高さとどう兼ね合うのかも、有料化を尻込みする理由です。

 

 

● 選手の意識とのギャップ

同様に、選手やチームと、有料観戦者のあいだにも意識の違いが生まれるように思います。

 

一口に「選手」といっても、生涯スポーツとして地域に根ざしてプレーしている選手や、まだブラインドサッカーをはじめたばかりの選手、日本代表として見られる意識も高くプレーする選手など多様です。

 

 「有料料金を払って見られる立場じゃない」

 「技術のレベルを批判されても困る」

 

草の根でプレーする選手も私達にとっては大切な存在です。有料化することで、その人たちの居心地が悪くなったり、批判の対象となることは意図することではありません。

 

運営同様、選手を見るまなざしが、有料化によって変わるだろうこと、それにどのように折り合っていくかも、大切な課題です。

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(つづきます)

強化費とはなにか?

●強化と強化費

都知事辞任でオリンピック・パラリンピック招致にも多少の関心が集まっています。

「競技団体の責任者としてはどうなの?」と聞かれることも多いですが、招致にしろ、パラリンピックが注目されるにしろ、「強化費」という"事実”について、日の目が当たる必要があると思っています。

それは、強化を下支えする強化費の仕組みの理解なしに、組織の財源がどうあるべきかや、パラリンピックがどうあるべきか、は前提条件を共有できていないと思うからです。

 

●日本ブラインドサッカー協会の「強化費」財源

JBFAでいうと、強化費の名目での収入は

 

 ・JPC(日本パラリンピック委員会)からの強化費助成

 ・個人の日本代表の遠征等にいただくカンパ、寄付金

 

の2つが主にあてられる収入源です。 組織全体予算から言うと、企業からの収入が多いJBFAですが、純粋な「強化費」に企業協賛がつくことはなかなか難しい実体があります。

 

「難しい」とは

 

 ・たとえば日本代表が意義付けの高い海外遠征に行く場合、その遠征費の足りない分に協賛、寄附をいただいた実績はあります

 ・しかし、「強化合宿の費用」「日本代表のトレーニングに関わる費用」では協賛、寄附は難しい ということです。

 

●JPCの強化費とは何か?

一般的に「強化費」というと、JPC(=日本障害者スポーツ協会)からのものが、“競技団体”の主財源となります。

この強化費はどのような計算式からなるのか、それは、成果主義です。

定められた国際大会の成果によって、ランクが「特A〜E」まで定められ、そのランクに応じて助成額が定められます。

 

その算出方法は

  ①・・・(直近の大会成績)×(大賞大会での入賞率 + 大賞大会への選手参加数)

  ②・・・(基礎点)+(加点) ① + ② =最高100点

と算出されます。

 

この得点に応じて、ランク(特A〜E)が付けられるのです。

ちなみに、この数式でブラインドサッカーの点数から導き出されるランクは、「D」です。

 

金額で見ると、平成16年度(2004年)まではゼロ円。平成17年(2005年)〜平成21年(2009年)まではおおよそ50万円前後。平成22年(2010年)以降は100〜150万円です。 (金額が上がっているのはJPCの強化費予算総額が上がっているためです)

毎年、算出方法に修正があるものの、概ねの考え方はここ数年同じ印象です。

 

また、現在は算出の計算において団体競技への配慮がありますが、数年前まではそれもなく、“成果”を出せていない団体競技にとっては厳しいものでした。

この仕組みは、成果が出た競技は一層成果が出やすく、成果が出ていない(または新しい競技)競技は自助努力が不可欠なシステムだと思います。

ブラインドサッカーの例でいえば、スタートアップのステージにあるなか、合宿、遠征の主要な資金源は「強化費」に求められない中で、団体競技として成果をださなければならないことになるのです。

 

なお、アテネパラリンピックの頃の2004年の強化費は0円、決算総額は約400万円です。

ロンドンパラリンピック前年の2011年のパラリンピック競技でいうと

 特Aランク:1,600万円×1.5

 Aランク:1,000万円×1.5

 Bランク:600万円×1.5

 Cランク:400万円×1.5

 Dランク:200万円×1.5

 Eランク:100万円×1.5

これに重点配分として、のべ1億円弱が選別された競技に助成されています(ブラインドサッカーは対象外)。

 

申し添えると、僕はこのシステムに賛同的です。「強化費」は大元をたどれば税金。オリンピック同様に「競技」の選択と集中が進んでいくのは、もはや覆る潮流ではありません。

 

●そこで、突きつけられる問題

厳然たる事実として、この配分方法がある中、絶対的な強化費も足りない中、ブラインドサッカーはどんな戦略が取れるのでしょうか?

 1)企業スポンサーを取る

 2)個人カンパ、寄付を募る

 3)他の助成金を取る

 4)強化に関わるコストを下げる

 5)それでもJPCの強化費に頼る

方法としてどんな戦略をとるか、そこに組織としての考え方、戦略、価値観があるのだとおもいます。

JBFAでは一定の仮説でこの課題に取り組んできたつもりですが、世の中にはどう写っているのでしょうね。

ロンドンパラリンピック【ブラインドサッカー】競技環境まとめ(その1)

国際大会の主催事業も実施する私達としては大会運営がどのようになされているのかも大事なチェックポイントです。マニアックな情報ですが、気づいた点をまとめます。

 

● ピッチ環境

・基本はホッケーコート

パラリンピックはオリンピックの後に実施されます。そのため、競技環境はオリンピック種目の二次的利用です。ブラインドサッカーの場合、ホッケー場が活用されます。

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今大会は、ホッケー場としてオリンピックに活用されていた場所ではなく、ホッケー場のサブグラウンドがブラインドサッカーに割り当てられています。(ホッケー場として利用されていたのは真隣にあり、CPサッカーの7人制で利用されています)

 

・サイドフェンス

サイドフェンスはいわゆるトタン素材。角度は未確認ですが、15度の日本のフェンスに比べて急なため、10度程度ではないかと思われます。

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サイドラインから「+1」オーバーして設置されることがルールブックでは求められていますが、この競技上はエンドラインと同じラインまでで、オーバーしていません。

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・ピッチの大きさ

ピッチの大きさは22m×42mです。原文の最新版に記されている20m×40mとは異なります。

 

・人工芝

人工芝はホッケーの後であるため、ホッケーで利用されていたものがそのまま活用されています。

今回の人工芝の特徴は、まず、青色であること。

次に、人工芝のあし(長さ)は極めて短いこと。

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3つ目に、密度が高いこと。

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4つ目に、保水性が高いこと。 

人工芝については、運営側でもさまざま配慮があったと見られます。たとえば、初日は水を撒かずに実施していましたが、競技2日目以降は、2試合に一度程度水をまいています。

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*写真:ホースでの水撒き。濃い色が水がすでに撒かれたところ。かなり強い日差しでも3〜4時間は乾いた色にはならない。

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*写真:一部、どうしてもすぐに乾いてしまう場所があり、そこはバケツの水で散水。

そもそもホッケーは水を撒くことが前提であり、パックが水で滑りやすいように配慮されています。逆にいうと、水を撒かないと、滑りにくく、ブラインドサッカーにおいても、「引っかかる」(ドリブルをしていてボールが足元でピタっと止まってしまう、ゴムとゴムがすれるようなかたちでひっかかるような、そんな状態)ことが初日は多く見られました。

大会の運営責任者もしょっちゅうピッチに出て、足でザッザッと人工芝をすりながら、滑りを確認していました。

 

競技2日目以降は水をまいて滑りをよくしていましたが、かえってそれがボールの音をけしているようにも思えます。そのためか、審判の情報によれば、初日は空気圧が0.8だったのに対し、競技2日目以降0.6まで減らしたとのことです(単位がなにかまで確認していません)。

また、水をまくと、ボールがバウンドする際や、キックで芝をこする場合など、水しぶきが上がるほどです。まいて1試合程度は、ボールが転がるだけでも水があがる程度に保水が高くなっています。PKにおいては選手がじっくりとボールの水をユニフォームで拭き取るシーンもみられました。

客席のスタンドも人工芝の上に立てられているため、実際に競技と同じフィールドの上に立てるのですが、感触としてはゴムに近く、「キュッキュッ」という感触です。日本がなれているロングパイルとも、砂入りショートパイルとも違う感触です。

 

・1/3ライン上に破線

ブラインドサッカーはコーラー、監督、ゴールキーパーが健常者(晴眼者)がにない、声を出せる範囲が1/3ずつに限定されています。

そのラインはこれまではサイドフェンス上にマークがつかれていただけですが(世界選手権はどうなっていたんでしょう?)今大会は、フィールド上にも破線がひかれています。

レフリーはこの破線を利用して、ガイドゾーンの注意をしています。

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● スタンド関係

観客席は、メインのサイドスタンドと片側にバックスタンドがあります。

アクレディテーションの発行されている関係者向けに、本部裏にメインのサイドスタンドの1/3程度のスタンドもあります。

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*写真:本部裏のサイドスタンド

バックスタンドの片側はスタンドはなく、全部で3つのスタンドに囲われていることになります。

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*写真:ゴール裏のバックスタンド

・3面囲いで「サッカー専用」感

本部裏のサイドスタンドは、北京の時にはなかったものです。どのスタンドもホッケー場の人工芝の上に立てられており、人工芝に傷をつけることなどは配慮として優先順位が落とされている状況が伺えます(後々、そのまま有効活用しようとすると客席をフィールド外にする傾向があるようです)。

そのため、ピッチを「囲っている感覚」はとても強いものになっています。さしずめ北京のときの競技上が「陸上トラックのある競技場」で、今回のものは「サッカー専用競技場」です。

 

・客席総数は北京の3倍ほど?

メインスタンドの客席も北京にくらべてだいぶ高くなっており、客席の収容数も随分高まっているように思えます。

 

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 *写真:メインのサイドスタンド。お客さんが少ないのはあまりに朝早いから。

 

(つづく)