フランスのブラインドサッカーフェンス
◎フランスのサイドフェンス
◎対フランス第2戦でのフェンス
新年度にあたって(その1)
日本ブラインドサッカー協会は、7月末決算のため、8月1日より新年度を迎えました。
● あらためて、僕らの目指すビジョンと果たすべきミッション
● ビジョンに向かうためのミッション
● 重点項目
アジア選手権 in 北京の運営について(その1)
ブラインドサッカーブラジル代表の凄さ
◎ 3月はブラインドサッカーブラジルフィーバー
サッカー界において、「ブラジル」ブランドはそうそうたるものがあります。ブラジルと言えば、「サッカー大国」「実力もトップ」「サッカーが文化として成立している」そんな言葉がサッカーを知らない人からも出てくる通り、サッカーとブラジルは強い関係をもってます。
そんなブラジルのブラインドサッカーの代表チームが3月に来日し、さいたま市ノーマライゼーションカップとフィアットカルチョという2つの大会に参加します。
通常のサッカーのブラジルも来日すれば大きな話題となりますが、ブラインドサッカーブラジル代表もそれに負けない魅力を持っています。正直、ブラジルの試合を無料で見れるこんな機会は、向こう10年はないんじゃないかと思います。お得です。友だちには、一生のうち一度見るべきものとして引きずってでも連れて来るべきものです。
ブラジルのプレーが見れる動画(1)
IBSA World Blind Football Championship 2010 - The Final
ブラジルのプレーが見られる動画(2)
Futebol para cegos final 2010 - Blind Football final
ちなみに、すでにチケットやVISAの関係からメンバーリストは出ていますが、ほぼこれまでのレギュラーの面々が来日予定です!
◎ ブラジル代表の戦績
どれだけ強いのか? 戦績です。
2004年 アテネパラリンピック 金メダル
2006年 世界選手権(アルゼンチン) 準優勝
2008年 北京パラリンピック 金メダル
2010年 世界選手権(イギリス ) 優勝
2012年 ロンドンパラリンピック 金メダル
パラリンピックについては、2004年から正式種目になって以来、3大会連覇。間違いなく、世界ナンバー1の実力です。
◎ 国内に世界トップチームを招待する意味
なぜブラジルが来日するのか? 実はこちら、昨年スペイン代表が来日した時と、同じ枠組みです。ちょうど1年前に詳しくエントリーで紹介していますので参考ください。
グラスルーツから強化を推進するためにも、日本代表に国際試合の試合数を担保していくためにも必要な取り組みです。また、運営・経営として見ても、大事な事業になりつつあります。
◎ いつ、どこで見られるの?
来日中、2大会、のべ3日間の大会に参加します。
◆ 3月20日(水・祝日)@フットメッセ大宮
来日初戦は、日本代表チームとの試合です。「さいたま市ノーマライゼーションカップ」として、ノーマライゼーションの理念普及の役割を担いつつ、さいたま市北区のイオン大宮屋上、フットメッセ大宮にて戦います。
当日は、ブラインドサッカー観戦の他、子ども向け体験会も実施予定です。詳しくは大会特設ウェブサイトを御覧ください。
◆ 3月23日(土)24日(日)@みなとみらいスポーツパーク
週末の土日には、「フィアット カルチョ 2013」として、全国の日本のクラブチームとブラジル代表を含めた競技会となります。日本のクラブチームは地域リーグの上位チームという参加に縛りもあるなか、より高いレベルの戦いを見せてくれる大会となります。
昨年はチームワークを魅せてスペイン代表をたまハッサーズが1−0で下すという金星も生まれ、代表ではないクラブの強みも見られる大会となるでしょう。
こちらも大会特設ウェブサイトをご覧あれ。
* * *
しつこいですが、ブラインドサッカーブラジル代表のプレーは、お金を出しても見れるものでもない貴重なものだと、強く観戦を皆さんにプッシュします! それに対する日本代表も、日本のクラブチームたちもきっと素晴らしいプレーで応じてくれるはず!
ブラインドサッカーのコアなファンも! まだ見たことなかったけどどこかで見たかったおいう方も! 今回は必見です。3日間も候補日がありますので、ぜひいずれかでご来場ください!
興行と無償観戦のはざま -どうしてアマチュアスポーツは興行しにくいのか? その1-
◉入場無料のジレンマ
日本ブラインドサッカー協会では、公式戦だけでも年間約80試合、日数としてのべ約20日の試合を行なっています。
そのすべてが、「入場無料」です。
「無料じゃなくて、500円でもとらなきゃ赤字じゃないの?」
「有料にしても今ぐらいはお客さん来るんじゃないの?」
そう有料化のご指摘をいただくことも大変多いです。
◉なぜ、私たちは大会の有料化をしないのか、できないのか?
● 日本の利用料金体系にある興行のハードル
最大の理由の1つは、日本の施設の持つ料金制度にあります。
日本の多くの施設の料金制度は、無償であれば利用料が安く、有償であれば利用料が高くなる傾向にあります。この無償と有償の料金格差が非常に大きい。ブラインドサッカーの日本選手権を実施するような優良大型施設であれば1,000円の入場料で500名の観客では大きな赤字になってしまいます。
つまり、有料の利用料金に耐えられるほど、現段階、入場者数は多くなく、無償の料金体系に沿ったほうが、結果としてコストを低くし、リスクの低い運営ができるのです。
アメリカでは利用料金体系が有料・無料のみに紐付いているわけではなく、ブラインドサッカーの規模に近い子どもや地域のスポーツ大会でも有料化ができているとのこと(くわしくは beyond sports のブログなどもご参照)。ブラインドサッカーも現状の規模でいうと、施設利用料が格段な値上げなく、500円程度の有料化から進められればリスク低く、その道を模索できるかもしれません。しかし、現実はそうではないです。
●有料化のインパクト
また、有料にした場合に発生する新たに発生するコストも有料化できない理由です。
無料の際になく、有料にした際に発生する業務としては、入場料金の管理、入場者の管理(もぎり、ゲートコントロール等)があります。ここにかけなくてはならない業務、人員、それらの労力・コストも見逃すことができません。
無料であることで、入場者のゲートコントロールや、立ち入り制限などは不要であり、またそれが生み出す ”雰囲気“ は、現状の規模のブラインドサッカーでは「良い」側面もあります。
「選手との距離が近い」
「設営や片付けをチームや観戦者、ボランティアに関係なくやれて、あったかい雰囲気だ」
「手伝うことがあるから、次にまた来たいと思える」
そんなコメントの裏側には、よい意味での「ハンドルのあそび」がブラインドサッカーの運営面にあるからとも言えます。
● 有料になると、観戦者のあり方が変わる?
もう一つは、「社会の見る目」です。100円でも500円でも有料で費用を取ると、「プロ」「サービスとして高い基準」を求められると、私は考えています。
「お金を払っているんだから、これくらいあって当たり前」
「運営もプロでなくては困る」
もちろん、運営もよりよいものを提供したい。それは入場料の発生有無に関わらず持っている気持ちです。
ただし、運営に有償常勤スタッフが当てられていなく、無償ボランティアスタッフ(それでもエキスパートたちですが!)に頼っているため、「プロフェッショナルサービス」の提供は困難です。そのための準備の労力、時間はとても不十分です。
この「有料で試合を見る」ときに皆さんがもつ「有料なんだからこれくらいの運営」という「固定概念」「ハードル」の高さとどう兼ね合うのかも、有料化を尻込みする理由です。
● 選手の意識とのギャップ
同様に、選手やチームと、有料観戦者のあいだにも意識の違いが生まれるように思います。
一口に「選手」といっても、生涯スポーツとして地域に根ざしてプレーしている選手や、まだブラインドサッカーをはじめたばかりの選手、日本代表として見られる意識も高くプレーする選手など多様です。
「有料料金を払って見られる立場じゃない」
「技術のレベルを批判されても困る」
草の根でプレーする選手も私達にとっては大切な存在です。有料化することで、その人たちの居心地が悪くなったり、批判の対象となることは意図することではありません。
運営同様、選手を見るまなざしが、有料化によって変わるだろうこと、それにどのように折り合っていくかも、大切な課題です。
(つづきます)
強化費とはなにか?
●強化と強化費
都知事辞任でオリンピック・パラリンピック招致にも多少の関心が集まっています。
「競技団体の責任者としてはどうなの?」と聞かれることも多いですが、招致にしろ、パラリンピックが注目されるにしろ、「強化費」という"事実”について、日の目が当たる必要があると思っています。
それは、強化を下支えする強化費の仕組みの理解なしに、組織の財源がどうあるべきかや、パラリンピックがどうあるべきか、は前提条件を共有できていないと思うからです。
●日本ブラインドサッカー協会の「強化費」財源
JBFAでいうと、強化費の名目での収入は
・JPC(日本パラリンピック委員会)からの強化費助成
・個人の日本代表の遠征等にいただくカンパ、寄付金
の2つが主にあてられる収入源です。 組織全体予算から言うと、企業からの収入が多いJBFAですが、純粋な「強化費」に企業協賛がつくことはなかなか難しい実体があります。
「難しい」とは
・たとえば日本代表が意義付けの高い海外遠征に行く場合、その遠征費の足りない分に協賛、寄附をいただいた実績はあります
・しかし、「強化合宿の費用」「日本代表のトレーニングに関わる費用」では協賛、寄附は難しい ということです。
●JPCの強化費とは何か?
一般的に「強化費」というと、JPC(=日本障害者スポーツ協会)からのものが、“競技団体”の主財源となります。
この強化費はどのような計算式からなるのか、それは、成果主義です。
定められた国際大会の成果によって、ランクが「特A〜E」まで定められ、そのランクに応じて助成額が定められます。
その算出方法は
①・・・(直近の大会成績)×(大賞大会での入賞率 + 大賞大会への選手参加数)
②・・・(基礎点)+(加点) ① + ② =最高100点
と算出されます。
この得点に応じて、ランク(特A〜E)が付けられるのです。
ちなみに、この数式でブラインドサッカーの点数から導き出されるランクは、「D」です。
金額で見ると、平成16年度(2004年)まではゼロ円。平成17年(2005年)〜平成21年(2009年)まではおおよそ50万円前後。平成22年(2010年)以降は100〜150万円です。 (金額が上がっているのはJPCの強化費予算総額が上がっているためです)
毎年、算出方法に修正があるものの、概ねの考え方はここ数年同じ印象です。
また、現在は算出の計算において団体競技への配慮がありますが、数年前まではそれもなく、“成果”を出せていない団体競技にとっては厳しいものでした。
この仕組みは、成果が出た競技は一層成果が出やすく、成果が出ていない(または新しい競技)競技は自助努力が不可欠なシステムだと思います。
ブラインドサッカーの例でいえば、スタートアップのステージにあるなか、合宿、遠征の主要な資金源は「強化費」に求められない中で、団体競技として成果をださなければならないことになるのです。
なお、アテネパラリンピックの頃の2004年の強化費は0円、決算総額は約400万円です。
ロンドンパラリンピック前年の2011年のパラリンピック競技でいうと
特Aランク:1,600万円×1.5
Aランク:1,000万円×1.5
Bランク:600万円×1.5
Cランク:400万円×1.5
Dランク:200万円×1.5
Eランク:100万円×1.5
これに重点配分として、のべ1億円弱が選別された競技に助成されています(ブラインドサッカーは対象外)。
申し添えると、僕はこのシステムに賛同的です。「強化費」は大元をたどれば税金。オリンピック同様に「競技」の選択と集中が進んでいくのは、もはや覆る潮流ではありません。
●そこで、突きつけられる問題
厳然たる事実として、この配分方法がある中、絶対的な強化費も足りない中、ブラインドサッカーはどんな戦略が取れるのでしょうか?
1)企業スポンサーを取る
2)個人カンパ、寄付を募る
3)他の助成金を取る
4)強化に関わるコストを下げる
5)それでもJPCの強化費に頼る
方法としてどんな戦略をとるか、そこに組織としての考え方、戦略、価値観があるのだとおもいます。
JBFAでは一定の仮説でこの課題に取り組んできたつもりですが、世の中にはどう写っているのでしょうね。
ロンドンパラリンピック【ブラインドサッカー】競技環境まとめ(その1)
国際大会の主催事業も実施する私達としては大会運営がどのようになされているのかも大事なチェックポイントです。マニアックな情報ですが、気づいた点をまとめます。
● ピッチ環境
・基本はホッケーコート
パラリンピックはオリンピックの後に実施されます。そのため、競技環境はオリンピック種目の二次的利用です。ブラインドサッカーの場合、ホッケー場が活用されます。
今大会は、ホッケー場としてオリンピックに活用されていた場所ではなく、ホッケー場のサブグラウンドがブラインドサッカーに割り当てられています。(ホッケー場として利用されていたのは真隣にあり、CPサッカーの7人制で利用されています)
・サイドフェンス
サイドフェンスはいわゆるトタン素材。角度は未確認ですが、15度の日本のフェンスに比べて急なため、10度程度ではないかと思われます。
サイドラインから「+1」オーバーして設置されることがルールブックでは求められていますが、この競技上はエンドラインと同じラインまでで、オーバーしていません。
・ピッチの大きさ
ピッチの大きさは22m×42mです。原文の最新版に記されている20m×40mとは異なります。
・人工芝
人工芝はホッケーの後であるため、ホッケーで利用されていたものがそのまま活用されています。
今回の人工芝の特徴は、まず、青色であること。
次に、人工芝のあし(長さ)は極めて短いこと。
3つ目に、密度が高いこと。
4つ目に、保水性が高いこと。
人工芝については、運営側でもさまざま配慮があったと見られます。たとえば、初日は水を撒かずに実施していましたが、競技2日目以降は、2試合に一度程度水をまいています。
*写真:ホースでの水撒き。濃い色が水がすでに撒かれたところ。かなり強い日差しでも3〜4時間は乾いた色にはならない。
*写真:一部、どうしてもすぐに乾いてしまう場所があり、そこはバケツの水で散水。
そもそもホッケーは水を撒くことが前提であり、パックが水で滑りやすいように配慮されています。逆にいうと、水を撒かないと、滑りにくく、ブラインドサッカーにおいても、「引っかかる」(ドリブルをしていてボールが足元でピタっと止まってしまう、ゴムとゴムがすれるようなかたちでひっかかるような、そんな状態)ことが初日は多く見られました。
大会の運営責任者もしょっちゅうピッチに出て、足でザッザッと人工芝をすりながら、滑りを確認していました。
競技2日目以降は水をまいて滑りをよくしていましたが、かえってそれがボールの音をけしているようにも思えます。そのためか、審判の情報によれば、初日は空気圧が0.8だったのに対し、競技2日目以降0.6まで減らしたとのことです(単位がなにかまで確認していません)。
また、水をまくと、ボールがバウンドする際や、キックで芝をこする場合など、水しぶきが上がるほどです。まいて1試合程度は、ボールが転がるだけでも水があがる程度に保水が高くなっています。PKにおいては選手がじっくりとボールの水をユニフォームで拭き取るシーンもみられました。
客席のスタンドも人工芝の上に立てられているため、実際に競技と同じフィールドの上に立てるのですが、感触としてはゴムに近く、「キュッキュッ」という感触です。日本がなれているロングパイルとも、砂入りショートパイルとも違う感触です。
・1/3ライン上に破線
ブラインドサッカーはコーラー、監督、ゴールキーパーが健常者(晴眼者)がにない、声を出せる範囲が1/3ずつに限定されています。
そのラインはこれまではサイドフェンス上にマークがつかれていただけですが(世界選手権はどうなっていたんでしょう?)今大会は、フィールド上にも破線がひかれています。
レフリーはこの破線を利用して、ガイドゾーンの注意をしています。
● スタンド関係
観客席は、メインのサイドスタンドと片側にバックスタンドがあります。
アクレディテーションの発行されている関係者向けに、本部裏にメインのサイドスタンドの1/3程度のスタンドもあります。
*写真:本部裏のサイドスタンド
バックスタンドの片側はスタンドはなく、全部で3つのスタンドに囲われていることになります。
*写真:ゴール裏のバックスタンド
・3面囲いで「サッカー専用」感
本部裏のサイドスタンドは、北京の時にはなかったものです。どのスタンドもホッケー場の人工芝の上に立てられており、人工芝に傷をつけることなどは配慮として優先順位が落とされている状況が伺えます(後々、そのまま有効活用しようとすると客席をフィールド外にする傾向があるようです)。
そのため、ピッチを「囲っている感覚」はとても強いものになっています。さしずめ北京のときの競技上が「陸上トラックのある競技場」で、今回のものは「サッカー専用競技場」です。
・客席総数は北京の3倍ほど?
メインスタンドの客席も北京にくらべてだいぶ高くなっており、客席の収容数も随分高まっているように思えます。
*写真:メインのサイドスタンド。お客さんが少ないのはあまりに朝早いから。
(つづく)